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東京都板橋区のクリニック。秀クリニックです。

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〒175-0093 東京都板橋区赤塚新町3丁目5-1

尿道炎Urethritis

尿道炎の診察の要約

排尿痛や尿道からの膿が出た場合、尿道炎の可能性が高いです。

受診(予約不要)、尿検査と診察。
    ↓
検査提出と処方(点滴)
    ↓
1週間後再診。結果説明と尿検査で治癒判定


淋菌
クラミジア
ウレアプラズマ
マイコプラズマ
アデノウイルス

が想定されている。
診療では、尿検査で菌を培養し診断をつける。結果に約1週間かかるので検査に出すと同時に薬を処方する。
マイコプラズマ、ウレアプラズマ検査は保険外なのでこの二つで4000円かかる。
当院では、初回投薬はアジスロマイシン2gの処方が多い。
原因菌が確定したら、投薬で治っているかの治癒確認検査が必要。
菌の消失が見られない場合は、2番目の薬を投薬する。

初診日の費用(目安 円)
 診察、淋菌クラミジア検査、処方箋料  2610
 マイコプラズマ+ウレアプラズマ検査  4000
      合計  6410

再診日の費用
 診察料  380
 淋菌クラミジアの治癒確認検査  1750
マイコプラズマ、ウレアプラズマの治癒確認検査  4000
    合計  2130-4380

その結果確認の費用、電話の場合
結果問い合わせ電話  300
 注意、保険3割での例。受診の時間によっては若干の違いがあり
 症状なく検査のみ、検査で菌が見られない場合などは上記の行わない項目が不要となる。

尿道炎の診断、治療

男性で、排尿時に尿道の痛みがあり、感染の機会があれば尿道炎を疑います。
尿道から膿が出ることもあります。
クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマ、アデノウイルスが現在原因として特定されていますが、それ以外の病原体も疑われています。
当院でも、培養検査ですべて陰性でも、抗生剤の内服で症状の良くなる方がかなりいます。これらの方には前立腺炎などの方もいると想像していますが、上記5つ以外の病原体もあるようです。

淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎の比較
  淋菌性  クラミジア性 
潜伏期間   3−7日  1−3週
 発症 急激   比較的緩徐
 排尿痛  強い  弱い
 分泌物の性状  膿性  漿液性ないし粘液性
とされていますが、これだけでの区別は難しいのが現状です。
淋菌、クラミジアは膿の色調により病原体を決めることはできません。
膿が出ない人もおおく、パートナーから感染しても症状なく受診されている方もしばしばです。

検査室での培養検査で数日後に原因菌はわかります。
ウレアプラズマとマイコプラズマは検査してみないとわかりません。クラミジア、淋菌との区別もできません。
検査に健康保険が適応されず、かつ馴染みのない名前なので検査をされない方も多いですが、した方がいいです。

病原体とそれぞれの治療

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
淋菌は高温、低温、乾燥で容易に死滅し、自然界には生息できず、淋菌感染者にのみ生息しています。1回の性行為による感染伝達率は30%だそうです。入浴しただけでは、家族にはうつらないと言っていいでしょう。(膿に汚染されたタオルなどからは間接的に感染することはあり)
男性では、淋菌性尿道炎や淋菌性精巣上体炎、精嚢炎をおこします。
女性では、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、肝周囲炎、尿道炎及びバルトリン腺炎をおこします。
また、淋菌性結膜炎や、淋菌直腸感染もあるとのことです。
咽頭にも感染する。風俗店のお姉さんの喉にはしばしば感染しています。
治療
淋菌に対しては各種系統の抗菌薬に対する耐性化が問題になっています。
  その感受性(薬が効くかといってもいいです)は
ペニシリン系 3.8%
テトラサイクリン系 28.0%
シプロフロキサシン 14.4%
アジスロマイシン 47.0%
セフィキシム 53.0%
セフトリアキソン(点滴) 97.7%
スペクチノマイシン(筋注) 100.0%
で、性感染症学会ではセフトリアキソンとスペクチノマイシンを推奨しています。またスペクチノマイシンは咽頭の淋菌感染症には到達しないので効かず、淋菌性咽頭炎にも効果が期待できるセフトリアキソンがいいとしています。
当院でもセフトリアキソンは使用していますが、1人、淋菌性尿道炎にセフトリアキソン1g(1日のみ)を点滴しましたが、11日後の治癒判定検査でまだ淋菌を検出したケースがあり。セフトリアキソンは治癒判定検査不要とも言われていますが、治癒判定検査した方がいいと思います。
 また、淋菌性精巣上体炎や、淋菌性骨盤内炎症症候群ではセフトリアキソンの点滴は単回ではなく、1日2回で数日(7日など)行う必要があるでしょう。

クラミジア(Chlamydia trachomatis)
同質の円柱上皮のある、尿道、子宮頸管、咽頭、眼瞼結膜に感染するそうです。
性器クラミジア感染症では、日本では女性が男性の2.3倍の感染率。20−24歳女性の1.2%に感染しているとのこと。クラミジア子宮頸管炎の70%の人が無症候。
男性では、クラミジア性尿道炎だけでなく、精巣上体炎もある。
女性では、クラミジア性子宮頸管炎と。その続発する卵管炎 骨盤内炎症症候群、肝周囲炎がある。そして卵管炎が原因で両側卵管閉塞を生じることがあり不妊の原因となる。
咽頭にも感染するのは淋菌と同様。

治療
調べてみると、淋菌ほど薬剤耐性の注意喚起は出ていませんが、私は注意が必要と思います。(後述)
マクロライド系かキノロン系、テトラサイクリン系がすすめられており、ペニシリン系やセフェム、アミノグルコシドは有効性が低いので使わないとされています。
薬剤としては
アジスロマイシン1gまたは2g 1日
クラリスロマイシン 400r 7日
ミノサイクリン(内服、点滴) 200r 7日
ドキシサイクリン 200r 7日
レボフロキサシン 500r 7日
トスフロキサシン300r 7日
シタフロキサシン 200r 7日
のどれかを使い、2−3週後に治癒判定検査をするとされている。


マイコプラズマ(Mycoplasma genitalium)

淋菌でもなく、クラミジアでもない尿道炎の原因菌として見つかったのがマイコプラズマとウレアプラズマ。
尿道炎症状を起こす。
治療
マクロライド系、テトラサイクリン系、キノロン系の抗菌薬が使われてきている。
2000年ころはアジスロマイシンがほぼ100%有効だったそうである。その後有効率は低下。
アジスロマイシン1−2gを投与し、治療失敗したばあい、シタフロキサシン200r7日を処方するのがよいとされている。
当院での調査ではアジスロマイシン無効例がおおいのが驚きであった。

ウレアプラズマ(Ureaplasma genitalium)
治療
薬剤の有効性は
アジスロマイシン1g 1日 100%
レボフロキサシン500r 7日 100%
シタフロキサシン100r 7日 95.2%
シタフロキサシン200r 7日 100%
とどの薬剤も有効である。

その他の尿道炎病原微生物に対する治療
治療
ジスロマック1−2gの単回療法をして、無効の場合グレースビット200r7日またはテトラサイクリン系7日の処方がいいだろうとされている。

当院での処方投薬。
淋菌に対しては、セフトリアキソンの点滴や、スペクチノマイシンの筋肉注射が推奨されているが、初診時の原因菌のわからない時点では内服薬を使います。
クラミジアに対してはアジスロマイシンが勧められています。以下に記載しましたように耐性菌が問題です。
マイコプラズマ、ウレアプラズマに対しては、推奨薬はありません。基準となる内服薬から使います。
アデノウイルスの尿道炎に対しては、効く薬はありません。アデノウイルスは自然治癒するので、そのまま治癒を待ちます。

当院での尿道炎の診療結果(過去5年分)

2015年1月から2020年7月までの当院に尿道炎で受診した患者さんの検査治療の結果を分析します。
分析対象となった人数は746人。のべ検査数は811検査。
検査は
クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマの4種類を検査室に出して分析した人641人
クラミジア、淋菌、2種類のみを検査室で分析した人175人
に分けられた。

4種類の病原体を調べた結果では
4種類とも検査で陰性は304
クラミジアのみは 125
淋菌は 87
ウレアプラズマ 53
マイコプラズマ 11
2種類の菌に感染しているケースが54
3種類の菌に感染しているケースが7
4種類とも感染していた人は0だった。

クラミジアの感染が多い。ウレアプラズマも予想外に多かった。

菌総検出数で検討すると

クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマの順となっている。
やはりクラミジアが一番起因菌としておおい。ウレアプラズマも侮れない。

 また、薬剤耐性菌についても分析した。
クラミジアを検出し、初回の薬剤(ほとんどがアジスロマイシン2g)で治癒しなかったものを耐性菌とした。
再診にこなかったため、治癒か菌存続か不明の人はずして計算しているので正確であると思います。
初回薬で治癒 初回薬で治癒せず 耐性率
クラミジア 118 76 41 35%
淋菌 60 56 14 23%
ウレアプラズマ 44 39 5 11%
マイコプラズマ 11 3 8 73%
クラミジアについては、性感染症学会では、アジスロマイシンを推奨しているが、耐性率35%もあり、アジスロマイシンで治癒したかの追跡が必ず必要。
淋菌にはアジスロマイシン2gは必ずしも推奨していないが、クラミジアより有効性が高い。
淋菌にはセフトリアキソンとスペクチノマイシンの注射が推奨されているが、点滴の副作用がやはり危険なので、淋菌か不明の場合も、アジスロマイシンがファーストチョイスでは安全なのではないかと思っています。
また、数は少ないがマイコプラズマの薬剤の無効例が顕著。2番目の投薬として、ミノサイクリンを7日投薬し6人中6人が治癒したので、マイコプラズマにはわかったら早い段階からミノサイクリンを考慮した方がよい。
クラミジア、淋菌、ウレアプラズマの初回投薬無効例も追跡できた48人についてはもミノサイクリンですべて菌の消失を確認できている。
正しく検査し、必要に応じ2番目の処方で治癒にもっていけると考えられる。治癒判定を省いてはいけない。

当院の処方では、尿道炎にはレボフロキサシンは使用していない。
内科もふくめ非常に多くレボフロキサシンが、それも長期間処方されるケースが多い。膀胱炎で特に顕著だが耐性菌がしばしばみられる。そのため、尿道炎に対しても、なるべくレボフロキサシンを使用せずアジスロマイシンかミノサイクリン、セフトリアキソン、スペクチノマイシンで対応している。
 レボフロキサシンの有効性、治癒率、耐性率も調べてみたいところである。

奥様が妊娠や婦人科健診でクラミジア検出

奥様やパートナーが妊婦健診や婦人科健診でクラミジアを指摘され、夫も検査治療を受けてくださいと受診される方もいます。
31人検査をしましたが、クラミジア陽性は11人。陰性は20人でした。
よって、奥様がクラミジアと言われても、夫の64%はクラミジアが検査で陰性です。
これをどう考えるか?
奥様のクラミジア検査が血液なのか膣分泌物なのかで正しい診断が行われてなかったのか。
夫の検査が偽陰性だったのか。
夫婦間でもめないよう、ご説明し、必要に応じ処方を行っています。

尿道炎の考察

今回の分析でクラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマの4種類の菌を検査していますが、すべて陰性のケースが304人、41%見られています。
排尿痛もなく、感染の可能性が極めて低くても、検査を受けられた方もいるため、健常の人もふくまれているとおもいますが、排尿痛等の症状があり、検査では陰性でも投薬後、痛みがなくなって楽になったという方も見られています(分析中)。アデノウイルスによる尿道炎で自然治癒したことや前立腺炎も考えられますが、クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマ以外の未知の原因菌もいるようです。
淋菌、クラミジアしか検査できないとき、この2個でない原因菌がいるのはわかっていても、検出できず、のちにウレアプラズマ、マイコプラズマが原因のこともあることが分かったわけで、同様に検査治療されることが今後あるかも知れないと、今回の分析で考えた次第です。



終わりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。


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