男性で、排尿時に尿道の痛みがあり、感染の機会があれば尿道炎を疑います。
尿道から膿が出ることもあります。
クラミジア、淋菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマ、アデノウイルスが現在原因として特定されていますが、それ以外の病原体も疑われています。
当院でも、培養検査ですべて陰性でも、抗生剤の内服で症状の良くなる方がかなりいます。これらの方には前立腺炎などの方もいると想像していますが、上記5つ以外の病原体もあるようです。
淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎の比較
|
淋菌性 |
クラミジア性 |
潜伏期間 |
3−7日 |
1−3週 |
発症 |
急激 |
比較的緩徐 |
排尿痛 |
強い |
弱い |
分泌物の性状 |
膿性 |
漿液性ないし粘液性 |
とされていますが、これだけでの区別は難しいのが現状です。
淋菌、クラミジアは膿の色調により病原体を決めることはできません。
膿が出ない人もおおく、パートナーから感染しても症状なく受診されている方もしばしばです。
検査室での培養検査で数日後に原因菌はわかります。
ウレアプラズマとマイコプラズマは検査してみないとわかりません。クラミジア、淋菌との区別もできません。
検査に健康保険が適応されず、かつ馴染みのない名前なので検査をされない方も多いですが、した方がいいです。
病原体とそれぞれの治療
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
淋菌は高温、低温、乾燥で容易に死滅し、自然界には生息できず、淋菌感染者にのみ生息しています。1回の性行為による感染伝達率は30%だそうです。入浴しただけでは、家族にはうつらないと言っていいでしょう。(膿に汚染されたタオルなどからは間接的に感染することはあり)
男性では、淋菌性尿道炎や淋菌性精巣上体炎、精嚢炎をおこします。
女性では、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、肝周囲炎、尿道炎及びバルトリン腺炎をおこします。
また、淋菌性結膜炎や、淋菌直腸感染もあるとのことです。
咽頭にも感染する。風俗店のお姉さんの喉にはしばしば感染しています。
治療
淋菌に対しては各種系統の抗菌薬に対する耐性化が問題になっています。
その感受性(薬が効くかといってもいいです)は
ペニシリン系 3.8%
テトラサイクリン系 28.0%
シプロフロキサシン 14.4%
アジスロマイシン 47.0%
セフィキシム 53.0%
セフトリアキソン(点滴) 97.7%
スペクチノマイシン(筋注) 100.0%
で、性感染症学会ではセフトリアキソンとスペクチノマイシンを推奨しています。またスペクチノマイシンは咽頭の淋菌感染症には到達しないので効かず、淋菌性咽頭炎にも効果が期待できるセフトリアキソンがいいとしています。
当院でもセフトリアキソンは使用していますが、1人、淋菌性尿道炎にセフトリアキソン1g(1日のみ)を点滴しましたが、11日後の治癒判定検査でまだ淋菌を検出したケースがあり。セフトリアキソンは治癒判定検査不要とも言われていますが、治癒判定検査した方がいいと思います。
また、淋菌性精巣上体炎や、淋菌性骨盤内炎症症候群ではセフトリアキソンの点滴は単回ではなく、1日2回で数日(7日など)行う必要があるでしょう。
クラミジア(Chlamydia trachomatis)
同質の円柱上皮のある、尿道、子宮頸管、咽頭、眼瞼結膜に感染するそうです。
性器クラミジア感染症では、日本では女性が男性の2.3倍の感染率。20−24歳女性の1.2%に感染しているとのこと。クラミジア子宮頸管炎の70%の人が無症候。
男性では、クラミジア性尿道炎だけでなく、精巣上体炎もある。
女性では、クラミジア性子宮頸管炎と。その続発する卵管炎 骨盤内炎症症候群、肝周囲炎がある。そして卵管炎が原因で両側卵管閉塞を生じることがあり不妊の原因となる。
咽頭にも感染するのは淋菌と同様。
治療
調べてみると、淋菌ほど薬剤耐性の注意喚起は出ていませんが、私は注意が必要と思います。(後述)
マクロライド系かキノロン系、テトラサイクリン系がすすめられており、ペニシリン系やセフェム、アミノグルコシドは有効性が低いので使わないとされています。
薬剤としては
アジスロマイシン1gまたは2g 1日
クラリスロマイシン 400r 7日
ミノサイクリン(内服、点滴) 200r 7日
ドキシサイクリン 200r 7日
レボフロキサシン 500r 7日
トスフロキサシン300r 7日
シタフロキサシン 200r 7日
のどれかを使い、2−3週後に治癒判定検査をするとされている。
マイコプラズマ(Mycoplasma genitalium)
淋菌でもなく、クラミジアでもない尿道炎の原因菌として見つかったのがマイコプラズマとウレアプラズマ。
尿道炎症状を起こす。
治療
マクロライド系、テトラサイクリン系、キノロン系の抗菌薬が使われてきている。
2000年ころはアジスロマイシンがほぼ100%有効だったそうである。その後有効率は低下。
アジスロマイシン1−2gを投与し、治療失敗したばあい、シタフロキサシン200r7日を処方するのがよいとされている。
当院での調査ではアジスロマイシン無効例がおおいのが驚きであった。
ウレアプラズマ(Ureaplasma genitalium)
治療
薬剤の有効性は
アジスロマイシン1g 1日 100%
レボフロキサシン500r 7日 100%
シタフロキサシン100r 7日 95.2%
シタフロキサシン200r 7日 100%
とどの薬剤も有効である。
その他の尿道炎病原微生物に対する治療
治療
ジスロマック1−2gの単回療法をして、無効の場合グレースビット200r7日またはテトラサイクリン系7日の処方がいいだろうとされている。
当院での処方投薬。
淋菌に対しては、セフトリアキソンの点滴や、スペクチノマイシンの筋肉注射が推奨されているが、初診時の原因菌のわからない時点では内服薬を使います。
クラミジアに対してはアジスロマイシンが勧められています。以下に記載しましたように耐性菌が問題です。
マイコプラズマ、ウレアプラズマに対しては、推奨薬はありません。基準となる内服薬から使います。
アデノウイルスの尿道炎に対しては、効く薬はありません。アデノウイルスは自然治癒するので、そのまま治癒を待ちます。